八ヶ岳の家

吉村順三

別荘の建つ場所は、八ヶ岳の東斜面で、海抜1.450m。海の口牧場の分譲地の東端にあり、北に浅間山、東に秩父連山、東南に富士を望む雄大な自然に囲まれている。敷地は前面に家の建つおそれがなく、施主の「自然のままの中に住みたい」という希望によって選ばれた土地である。

敷地の形状は、東側道路から中央で3m上がり、西側境界では8m高くなっている。建物は、敷地中央に配し、道路から1.5m上がった位置に、1階部分の車庫、工作室、予備室、機械室を設け、主部分の玄関、居間、食堂、寝室などを2階に置いた。アプローチは1階の車庫と予備室の間を、東側より西側にくぐり抜け、階段を上がって2回中央の玄関にたどり着く。本来は外部階段であるが、冬の寒さと雪、氷から守るため、ガラスで通路全体をカバーした。

玄関の右手に居間、食堂、左手に和室、寝室等を配置し、建物を「くの字」に曲げたことによって、おのおのの室からそれぞれ異なった眺望を得ることができる。

八ヶ岳高原の自然をできるだけ残すため、工事中に敷地内の樹木、草花を傷めないよう注意しながら施工し、特別な造園はしていない。夏場は樹木の中に埋もれて、外部から屋根が多少見える程度である。

暖房は電気の床暖房と、立上りの早い温風暖房とを併用したので、氷点下15℃の冬期使用にも十分対応できる。

外部は、1階部分をコンクリート打放しの上に生地仕上げとしてテラベールカラーペイント吹付け、2階は唐松堅羽目押縁止めキシラデコール塗り、屋根はカラー鉄板瓦棒葺き仕上げで、周囲の景観になじませた。

大野寛(吉村順三設計事務所)
新建築住宅特集1989年12月号